NECからPC-98と時を同じく(正確にはPC-9801Fと同時)に登場した16bitパソコンです。

バリエーションはモデル10~30に加えS,SFというタイプを加えて計5機種を確認しています(ちなみに型番が面白くてモデル10~モデル30はPC-10010~PC-10030なのにSFはPC-100SFといった具合に大らかな採番がされています)。


1.PC-100について

1-1.フロントマスク

搭載するFDDによりフロントマスクの印象がかなり印象が異なります。FDDはモデル30がTEAC製:FD-55B-06-U、とモデル10、20は松下製:JA-551を搭載しています。

モデル30

モデル20


1-2.背面

背面にはRS-232C、プリンタ、RGBと拡張スロットが3スロットあります。1スロットにはカラーボードが入ることが前提の為、実質利用可能なスロットは2スロットになります。カバーをとるともう1スロットありますが漢字ROMが刺さっています。RAMも追加したいしHDDも内蔵したい、FM音源も必要・・・とスロットが足りないのが悩みです。


1-3.キーボードとマウス

キーボードの外観はPC-8801MKIIとほぼ同じです。本体を入手する前はPC-88のキーボードが使えるのではないかと思いましたがモールドだけの流用のようです。

同じだと思っていたのですが実際に並べてみると厚さが全く違います。キーボードの刻印も一部異なります。結局流用しているのではなく、キーボードを作ったメーカーが同じということだと思います。キートップの形状とキースイッチは共通です。

1-4.マザーボード

マザーボードは何回か改版されています。版数の確認は拡張スロットの上側の基板番号の右に丸で囲まれた数字があります。現状、③と④を確認していますがどちらも結構なリワーク(パターンカットやジャンパー、後付け部品の実装)が入っています。また③の基板について、モデル30のマザーボードはモデル20(松下FDDを搭載)をベースにTEACのFDDを利用できるように改造されています。

1-4-1.マザーボードの版数を確認する方法

3版?

4版?


1-4-2.マザーボード概観

多分3版(この画像撮影時はまだ基板にバージョンがあることを把握していなかった)

モデル30


モデル20


4版

モデル30


1-5.FDD

純正FDD:FD-55B-06-U

設定個所はDS0/2(注:2台目のドライブは1ではなく2になる)と画像左上のジャンパーST/WTはST側をショート(もしかしたらDS/ST/WTでDS-STをショートかもしれない)。


※同じFD-55B-06Uですがオークションで入手したものは制御基板やジャンパーが異なっていましたのでメモを残します。

オークションで入手したドライブで型番は純正と同じFD-55B-06Uですがコントロール基板が異なります。画面中央の74ALS08の上に銃声ドライブにはないジャンパーがあります。ここはSMとMLをショートさせることで動作します。入手時MLがオープンでした。この状態だと一見動くのですがcommand.comの起動に失敗します。



2.コンデンサ交換

2-1.電源

お約束の電解コンデンサを交換します。PC-100の電源はX68000のような4級塩の電解コンデンサは使用していませんが経年で液漏れを起こしていることも少なくありませんので交換します。

電源を分解の際にスイッチ側のプラスチックのブッシュが硬くて外し方がわかりません。そこでこのブッシュをケーブルに注意しながらニッパーで破壊して代わりに自在ブッシュを断線防止に使用します。


PC-100電源ボードコンデンサ一覧(独自調べ、各自自分の環境に適用の際は再確認の事)

 № 容量 電圧 備考
C07  470uF 200V  
C08  470uF 200V  
C17  22uF 50V  
C18  10uF 50V  
C19  47uF 35V  
C20  47uF 25V  
C23  470uF 25V  
C25  10uF 50V  
 № 容量 電圧 備考
C29  100uF 35V  
C30  10uF 50V  
C34  2200uF 10V  
C35  2200uF 10V  
C36  2200uF 10V  
C41  10uF 50V  
C47  1uF 50V  

2-2.マザーボード

電解コンデンサとタンタルコンデンサを交換します。タンタルコンデンサは電解コンデンサのような液漏れの心配はありませんが故障時は短絡の危険があります。最低電解コンデンサは交換します。

PC-100マザーボードコンデンサ一覧(独自調べ、各自自分の環境に適用の際は再確認の事)

 № 容量 電圧 備考
C105  10uF 16V  タンタル
C109  10uF 16V  タンタル
C110  10uF 16V  タンタル
C111  10uF 16V  タンタル
C112  22uF 25V  タンタル
C113  22uF 25V  タンタル
C114  22uF 25V  タンタル
C115  22uF 25V  タンタル
 № 容量 電圧 備考
C116  22uF 16V  タンタル
C117  22uF 16V  タンタル
C118  10uF 16V  タンタル
C119  10uF 16V  タンタル
C120  10uF 16V  タンタル
C123  4.7uF 25V  電解
C124  10uF 16V  タンタル

3.バッテリー交換

PC-100にはカレンダーバックアップ用のニッカドバッテリーが搭載されています。現在新品の入手は困難なので逆電流防止用にダイオードを挟んで1次電池への交換を行います。


3.動作の為の環境整備

3-1.RGB

3-1-1.RGB変換ケーブルの作成

PC-100のRGBコネクタは独自形状(D-SUB9PIN)の為、変換コネクタが必要です。)。

ピン 内容 純正Cの線色・備考
1  R
2  G
3  B
4  H-Sync
5  V-Sync
6  GND オレンジ
7  GND
8  GND
9 SENSE

黒(OPEN:横 L:縦)

※純正C=純正のRGBケーブル

RGB端子の9PINがディスプレイの縦横を検出する端子になっています。Lで縦モードになります(オープン時は横です)。具体的には水銀スイッチをLCDの背面に貼り付けています。


初代変換ケーブル

PC-100の本体側のコネクタ部分のパネルの縦幅が狭いために市販のコネクタにブーツをかぶせるとブーツが邪魔でコネクタが刺さりません。そこで写真のような中継コネクタを使用します(普通のパーツショップで売っています)。

二代目ケーブル

PC-100純正のRGBケーブルを使用した変換ケーブルです。RGBコネクタの変換の他、SENSE(縦横置き判別信号)を引き出しています。傾斜スイッチをつけることで液晶の回転に同期して画面の縦横を切り替えられます。



3-2.キーボード

3-2-1.(インスタント)キーボードケーブルの制作

パソコン棚にPC-100を納めたくて長めのキーボードケーブルを作ろうと思ったのですがPC-100のキーボードは不思議がいっぱいです。ケーブルは両端、同じコネクタなのですがなぜかキーボードと本体ではコネクタが異なります(キー:ミニDIN6PIN、本体:同9PIN)。意味わかんないです。どうしようか悩んだのですがとっても簡単な方法がありました。

用意するのはPS/2ケーブルです。そのままではミニDIN9PINの方が刺さらないのですがオスコネクタの真ん中にあるプラスチックの出っ張り(ガイド)を小型のラジオペンチか何かで折ってしまってください。これだけで即席のキーボードケーブルが出来上がりです。


3-3.PC-98のバスマウスを活用する(変換ケーブルの作成)

3-3-1.PC-98のバスマウスを活用する(変換ケーブルの作成)

PC-100のマウスとPC-98のマウスはコネクタ形状が異なるだけで変換コネクタを作れば流用が可能です。

3-3-2.N5200のマウスを接続する

N5200のマウスはPC-100にそのまま接続できます。ボールがゴムの為、純正マウスよりもスムーズに動きます。



4.フロッピーの強化

4-1.2DD化について

PC-100はハードウェア(搭載FDD除く)、BIOSやBOOTローダでは最初から2DDに対応しています。この為、標準のFD-55B-06-U(2DD)を2DDのFDDに換装し簡単な設定変更を実施する事で2DD化できます。

① 本体側の設定

 PC-100のFDは簡単な設定変更で2DD化が可能です。

  OFF ON
S1-1 2D  2DD
S1-2 FDD2台 FDD1台
S1-3  白黒  カラー
S1-4    

※2DD化したPC-100でも2DのFDは読み取れますがBOOTはできなくなるので2DDのシステムを作成しておく必要があります。

② 利用できるドライブと設定

 TheBasicで掲載されたときは松下のJA-561を推奨していましたが現在入手は困難です。そこで

 現在入手できる可能性があり、且つ利用可能なドライブを紹介します。

型番 メーカー 確認した設定等

 FD-55F-03-U

(FYD051)

TEAC   

(NEC)

 PC-9801Fから外したドライブでチェック。1ドライブの設定はそのままで可。2ドライブはDS1→DS2に切り替える。

MF353C-152MY

MITSUBISHI ELECTRIC

3.5インチ、動作は未確認だが入手した個体に内蔵されていたために使用可能と判断

FD1035

NEC

PC-9801U搭載のドライブです。

JU-363-06

松下

オークションで入手のPC-100に実装してあった。整備後動作確認OK

4-2.2HDのFDDドライブを接続する

2HDのFDDを接続する方法としてはFDDボードFDI-100を使用方法、ITEM製SASI-2HD複合ボードを利用する方法(先人に感謝!)があります。FDドライバはPC-9881.sys、FORMATはformat8.COM(FORMAT1.COM?)を使用します。2HDのFDDは原則SASI-HDDが搭載されていることを前提としており2HDドライブがFドライブ以降から始まることを前提として作られています。

①FDI-100

ケーブルのピンアサインはPC-98の1MB FDD-I/F(50PIN)のNCと沢山あるGNDを整理して36PIN化したものです。

 

ITEM製SASI-2HD複合ボード

FDDは34PINのフラットケーブルで接続します。注意ポイントとしてはフラットケーブルの2PIN(MEDIA-SELECT)をカットしてドライブ側をPULL-UPする必要があるようです(プルアップしないとファイル読み込みでエラーになります)。


5.ハードディスクを増設

SASIベースのHDDを接続できます。ただし、起動はFDDからでHDDはドライバを組み込んで使用します。HDDの普及期前に登場したPC-100は残念ながらこの領域は熟成していないようです。

5-1.SASIのHDDを接続する(メーカー純正)

純正ボードPC-10000-08に最大10MBのHDDを接続できます。取り扱いできるHDの容量は10MB、5MBの2種類(未確認情報)です。

利用には純正SASIドライバ「PC-98H.SYS」の組み込みが必要です。

変換番長Pro、RaSCSI(1.51/1.52)の接続を試みましたがFORMATの途中でが発生して先に進めません。

5-2.SASIのHDDを接続する(サードパーティー)

Item社がSASI-I/F(2HD-FDDの複合ボード)とドライバ、FOMATユーティリティまで提供してくれています。

ドライバ:MXDRV_10.SYS

FORMATユーティリテ:MXDRV_10.EXE

※ユーティリティのHELPではSCSIの記述がありますがSASI接続の認識です。

・RaSCSI(1.51)で初期化、領域確保、領域のアクティブ化まで確認しています。

※MXDRV_10.SYS組み込み時「固定ディスク装置は認識できませんでした。」がでてもそのまま進めて大丈夫です。

・変換番長Proはドライバーがうまく認識できないようです。

4-4.SCSI-HDDを接続する

 98+2で作成されたSCSI-IFを使用してSCSI-HDDを増設します。

HDDは4.3GBバイトまで接続の実績がある事、1パーティションのサイズは32MBである事、ドライブの最大数は16であることを98+2に参加されていた方にご教授いただきました。

FORMAT TOOL:SFDISK

※FORMATの流れは下記を参照

A>SFDISK↓

HDD/MO format and partition utility for ASPI 1.0

 copyright by Tsuru-Zoh, Nov.21,1992

 

Terget No.0 : HA #0,SCSI-ID 0 NECLPO0 PC-100cPC.org     CCS1 Rigid

 

Select terget number( 0 to 0 ) :

 

You selected HA #0,SCSI-ID 0 NECLPO0 PC-100cPC.org     CCS1 Rigid

Are you sure ? (Y/N) : Y↓

 

Total capacity is 471MByte.

Do You wish to use the maximum available size for Single partition ? (Y/N) N↓

 

How many partitions do you want ? 12↓


5.カラーモードの設定

  カラーモード 白黒モード   
S3-1 ON OFF
S3-2 OFF ON
S3-3 ON OFF
S1-4 OFF  ON
  OFF ON
S1-1    
S1-2    
S1-3  白黒  カラー
S1-4    


6.256KB拡張メモリ(PC-10000-05)の設定

PC-10000-05は128KBの拡張メモリを2SET搭載していてメモリのどこにマップするかもそれぞれに設定(SWをON)します。設定の詳細は下記の通りです。

DIP SWITCH番号 絶対アドレス 容量
S2 S1
1 7 20000H~3FFFFH 128Kバイト
2 8 40000H~5FFFFH 128Kバイト
3 9 60000H~7FFFFH 128Kバイト
4 10 80000H~9FFFFH 128Kバイト
5 11 A0000H~BFFFFH 128Kバイト
6 12

7.ソフトウェアについて

7-1.OS

PC-100のMS-DOSは正式リリースおよび有志による独自移植を含めて複数バージョンがあります。

ソフトウェア バ―ジョン
 MS-DOS.SYS  2.01、2.11、3.1
IO.SYS 1.1、1.2、3.2
COMMAND.COM 2.10、2.11、2.11V、3.10

①MS-DOS2.01

製品バンドルのOSです。2Dで提供されていますがやはり少々窮屈です。

②MS-DOS3.1

パワーユーザによる移植物です。現状はまだ詳細は不明です。


7-2.GAME

LODE RUNNER

N-100BASICのフォルダに「GAME.EXE」の名前で入っています。



7.オプションボード

PC-100の拡張ボードです。他機種は博物館でご紹介していますがPC-100は不明な点が多く、しばらくはN地区内で管理します。

7-1.純正オプション

①カラーボード:PC-10000-03

②256KB増設RAM:PC-10000-05


③512KB RAMボード:PC-10000-06

④ハードディスクI/Fボード:PC-10000-08


7-2.増設プロセッサ

③i8087

④i8089


7-3.同人・サードパーティ製オプション

⑤漢字ROMボード:MK-100-01

「マイコンショップ北九州」製のJIS第2水準搭載漢字ROMボードです。

⑥SCSI+RAM:YAMAHA-SCSIBOARDⅢ

PC-100のSCSI+RAMの複合ボードです。

SCSIコントローラはMB89352AP。

RAM部分には30PIN-SIMM(たぶん1MB×2)が刺さりますがバンク切り替えの仕様は現状不明です。SCSIについてはBOOT用のROMがないことから起動用には使えないと思います。


⑦フロッピーディスクI/Fボード

2DDまでは内蔵でできるので2HD用だと思われる。

 

⑧ITEM社製SASI2HD-FDD複合ボード

ITEM社製のSASIと2HDのFDDを一枚にまとめた複合ボードです。